地域学校協働活動と社会に開かれた教育課程の具現化に向けて |
皆さん こんにちは。ご紹介いただきました県統括コーディネーターの中川です。よろしくお願いします。
皆さんと一緒に地域学校協働活動と社会に開かれた教育課程の具現化に向けて考えていきたいと思います。
私は平成9年4月、新任校長として七滝小学校に赴任しました。それまで、社会教育課に勤務していました。社会教育課では、「学社連携」や「学社融合」の言葉で学校と社会との連携を訴えていましたので、着任と同時に「教育懇談会」を立ち上げました。現在の「学校運営協議会」のようなものです。メンバーは、区長、公民館長、民生委員、婦人会、老人会等の代表の皆さんです。その第1回の会合でのことです。いきなりある区長さんから「校長、地域の子供たちがなかなかあいさつしません。学校ではどんな指導をしているのですか?」と質問されました。その質問に応えようとしたところ、別の区長さんが「あたはなんば言いよっとな。そぎゃんした問題が地域にあるけん、今夜はそぎゃんこつば話し合おうと校長先生が私たちを呼びなはったつたい。地域でも子供たちがあいさつできるようになるにはどうすればよかかみんなで話し合おうじゃなかな。」と。この一言で、地域でのあいさつ運動について話し合いが行われました。子供ばかりにあいさつを求めるのではなく、家庭でも地域でもまずは大人からあいさつ運動を始めようとなりました。子供たちの成長を地域総掛かりで支援し、見守るというまさに地域学校協働活動の推進が話し合われました。
「地域学校協働活動」という言葉が耳慣れない方もいらっしゃるかも知れませんが、一言で言いますと、これまで学校応援団などと言っていた活動を、「支援」から「連携・協働」への視点から見直したものです。このことを文科省の「地域学校協働活動の推進に向けたガイドライン」には次のように記してあります。
地域による学校の「支援」から、地域と学校のパートナーシップに基づく双方向の「連携・協働」へと発展させていくことを目指していることです。地域が学校・子供たちを支援するという一方向の関係だけではなく、子供の成長を軸として、地域と学校がパートナーとして連携・協働し、互いに膝をつき合わせて、意見を出し合い、学び合う中で、地域の将来を担う人材の育成を図るとともに、地域住民のつながりを深めることにより、自立した地域社会の基盤の構築・活性化を図る「学校を核とした地域づくり」を推進し、地域の創生につながっていくことが期待されます。 |
では、今なぜ地域学校協働活動かと言うことです。ここを少し見てみたいと思います。
平成29年3月末、地教行法が改正されました。資料に付けていますので後ほど確かめてください。地教行法第47条の6第1項で、学校運営協議会の機能を、これまでは学校の運営に関する協議だけでしたが、学校運営に必要な支援に関する協議を付け加えました。つまり学校目標に迫ったり、課題を解決する活動方法や内容・形態等も協議するとしたのです。ですから、運営協議会委員に地域学校協働活動推進員やボランティア代表も入れるようになったのです。
また、社会教育法も同時期に改正されました。社会教育法第五条2項で、「地域住民その他の関係者が学校と協働して行う活動を地域学校協働活動という」と明記したのです。そして、「市町村教育委員会は当該地域学校協働活動が学校との適切な連携の下に円滑かつ効果的に実施されるよう、地域住民等と学校との連携協力体制の整備、地域学校協働活動に関する普及啓発その他の必要な措置を講ずるものとする」と規定されたのです。
さらに、2年後から実施されます新しい学習指導要領には「社会に開かれた教育課程」が示され、学校と地域が目標を共有し、よりより学校教育を通してよりよい社会を創るとあります。その視点③に、「教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること」と示しています。
そのほか、21世紀に生きる子供たちには、キャリア教育の視点から、地域の様々な大人と出会い、社会的・職業的自立を促す必要性があるとか地域の大人との関わりを通じて、自己肯定感やコミュニケーション力育成の必要性がある等の指摘があります。
このように地域学校協働活動は、一過性のブームではなく法に明記され、社会から要請された活動なのです。この地域学校協働活動を推進する上で重要な役割を果たす地域学校協働活動推進員の委嘱であるとか、推進体制の整備等も法に明記されました。そのことは、資料の社会教育法を後刻読んでください。
この地域学校協働活動を推進する体制についていくつかお話しします。
まず、「地域学校協働本部」について見てみます。
文科省の「地域学校協働活動の推進に向けたガイドライン」に、「地域学校協働本部」について次のように記してあります。
従来の学校支援地域本部等の地域と学校の連携体制を基盤として、より多くのより幅広い層の地域住民、団体等が参画し、緩やかなネットワークを形成することにより、地域学校協働活動を推進する体制として、平成27年の中教審答申で提言されたものです。なお、連携の体制は様々な形態があり得るため、地域学校協働本部について法律上の規定はありません。 |
そこで、各教育委員会では、地域学校協働本部設置に向けて検討されると思いますが、その視点として、地域による学校の「支援」から、地域と学校双方向の「連携・協働」を推進し、「個別」の活動から「総合化・ネットワーク化」へと発展させていくことを前提に、下記機能を必須とすることが重要です。
○コーディネート機能 ・地域住民と学校との連絡調整、ボランティアの確保、活動の企画・調整等 ・地域学校協働活動推進員のネットワークの構築等関係者の連携 ○多様な活動 ・地域人材育成、地域の行事・祭り等への参画、学校に対する多様な協力活動 ○継続的な活動 ・長期的な視点に立った財源確保等持続可能な地域学校協働活動の実施 ・継続的な住民の参画の推進のため、研修や啓発活動等を計画手に実施 |
私は本活動が、多様で継続的な活動となるためには公民館等社会教育施設との連携が重要であると思っています。今、地域学校協働活動の全国的な共通の課題はこの活動に参画される方の高齢化・固定化・減少化への対応です。この課題への対応の一つは、住民の生涯学習の成果を活用することだと考えています。
一昨年の熊本地震で甚大な被害を被った益城町では、現在公民館講座は休止状態ですが、地震前までは、公民館主催講座が17講座ほどありました。そろばん、習字、ペン習字、絵手紙、陶芸等です。ここで学んだ人たちが、学んで得た知識や技能を生かして社会参加活動をしておられます。
益城町の取り組みについて紹介します。私は平成16年4月から益城町の社会教育指導員をしていました。平成17年10月、「脳の活性化とお孫さんや近所の子供たちにそろばんを教えてみませんか」をキャッチフレーズに公民館講座に「そろばん教室」を追加開設しました。15名ほどの参加がありました。翌年、そろばん教室参加者の方10名とある小学校の3年生の算数の授業「そろばん学習」に押しかけボランティアに行きました。担任の先生は校長先生に、「地域の高齢者の方の生きがいづくりのためにどうして私のクラスの子供をかさねばならないのですか。」と抗議されたそうです。校長先生は、「せっかくそろばん学習の応援をしたいと言われるのだから、そう言わずに試しに1度だけしてごらん。」と担任の先生におっしゃったどうです。担任の先生は校長先生からそう言われたのですから、渋々一緒に授業をされました。授業が始まると、そろばんの操作の基本的なことを先生が指導されますが、子供たちはそろばんの珠の入れ方ができません。親指だけで珠を入れる子、人さし指だけで入れる子、など指遣いが全くできません。そこで、ボランティアが子供たち一人一人に丁寧に手を取って指導しました。足し算の仕方、例えば「4+3」の計算方法はほとんどの子が分かりません。それもボランティアが丁寧に教えました。休み時間になると、いつもはすぐに外に飛び出す子供たちがボランティアに話しかけました。「丁寧に教えてくださったので今日のそろばんはよく分かりました。」「私のおばあちゃんが使っていたそろばんがあるので家に帰ってからもう一度やってみます。」「7+6の計算が分からなかった時、丁寧に教えてくれたのでよく分かりました。ありがとうございました」など話していました。その光景をご覧になった先生は、ボランティアの学習支援のすばらしさを実感され、「明日の授業も応援してください。」と言われました。その学校ではその後、毎年学習支援に行っています。現在は、このそろばん講座受講生が町内5つの小学校で子ども教室の指導者となり、そろばん学習の支援をしています。また、○付けや傾聴ボランティアの学習支援もしています。この方達の活動ぶりに刺激され、ボランティアの輪が広がって、毛筆習字、ミシンソーイング、読み聞かせ、傾聴等が行われています。
また、公民館講座ばかりでなく、サークルや同好会等で同好の人を拡げているところもあります。例えば、読み聞かせグループの人は読書好きの人たちが読書会等を通じて読み聞かせボランティアを養成しておられます。口コミで広がっている例もあります。グラウンドゴルフで子供との交流を体験した人が楽しかったことを周囲の人に話すことによって、「私もこの次は行ってみよう」とボランティアの輪が広がる例もあります。
宇土市では、このようにして発掘・養成された人材を「人材バンク」に登録してもらって人材活用事業を推進しておられます。市内の小中学校で活用されております。
地域学校協働活動を活発に推進するのに欠かせないのが、学校と地域をつなぐコーディネート機能です。
教育委員会は、この機能を持った人を「地域学校協働活動推進員」として委嘱しました。これまで学校支援コーディネーターと呼ばれていた人、放課後子ども教室コーディネーターと呼ばれていた方、さらに宇土市では、校区公民館長さんを兼務委嘱してあります。また、社会教育指導員を統括コーディネーターに委嘱されました。
ほとんどの学校では、地域連携担当職員を校務分掌へ位置づけてあります。教頭先生か主幹教諭、教務主任が兼務されているところが多いようです。しかし、担当者だけに負担がかかるのでそこを解消したいと上益城の御船小学校では、地域連携担当者をチームとして位置づけてあります。
概要を紹介します。チーム構成は、教頭、教諭、事務職員です。教頭先生が地域との連絡調整を担当していらっしゃいます。担当教諭の先生が、担任の先生方の意向等を聞き、その内容を教頭先生に知らせる校内の連絡調整及び記録を担当していらっしゃいます。事務職員の先生は、学習支援者の応接を担当していらっしゃいます。担任の先生は、学習支援要請内容を定められた様式に従ったメモ書きを担当教諭に渡し、担当教諭はそれを教頭につなぎ、教頭は地域コーディネーターにメモ書きをファックスで送り学習支援者を依頼をします。地域コーディネーターは、メモ書きをもとに学習支援者を探し、学校へ報告します。それぞれが役割を分担しているので、担当者の加重負担を軽減しています。御船小学校の地域コーディネーターは、校区在住の社会教育委員さんと元PTA副会長さんです。校長先生から口頭で委嘱してあります。社会教育委員さんは、校区在住の学習支援者を探し、PTAの元役員さんは、PTA関係者から学習支援者を探すという役割を分担してあります。
御船小学校のように地域にコーディネーターがいると、学校は連絡調整がとてもやりやすくなりますので、地域コーディネーターという名称ではなくとも地域の団体あるいは同好会等で、学校との窓口になることをどなたかお一人決めておいていただくよう依頼されたらいかがでしょう。
もう一つの取り組みは、七滝中央小学校で実践しています「校区公民館長会議でのボランティアの役割分担協議」です。
学習支援が必要な教科・人数・時期等を明示した地域学校協働活動年間計画が学年毎に作られています。これを研究主任がまとめていらっしゃいます。この年間活動計画をもとに、各学期の公民館長会議で、ボランティアの分担を協議するのです。一昨年までは学期毎の活動計画でしたが、公民館長から、年間の活動計画があれば、公民館で年間を通した人材派遣の計画ができると同時に幅広い人材を発掘しやすいとの要望があり、年間活動計画をもとに協議が行われています。また、学習支援の様子を学校便りで校区に知らせていますので、校区では学習支援者を賞賛したり自分もできることがあったら学習支援をしようとの支援体制が整いつつあります。これは、学校を核とした新たな地域づくりにつながります。
このような地域学校協働活動は、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)との連携により一層効果を発揮します。
文部科学省ホームページによりますと、コミュニティ・スクールとは
コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は、学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」への転換を図るための有効な仕組みです。コミュニティ・スクールでは、学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことができます。 学校運営協議会の主な役割として、 ○ 校長が作成する学校運営の基本方針を承認する ○ 学校運営に関する意見を教育委員会又は校長に述べることができる ○ 教職員の任用に関して、教育委員会規則に定める事項について、教育委員会に意見を述べることができる |
の三つがあります。
コミュニティ・スクールとの連携による効果は、学校運営に必要な支援に関する協議の結果を地域学校協働活動に確実につなげることで、学校が必要とする支援を効果的に実施することができることです。
また、新しい学習指導要領の「社会に開かれた教育課程」の具現化を図る上でも大変重要なことだと思っています。
社会に開かれた教育課程について、文部科学省は「新しい学習指導要領の考え方~中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ」で次のように記しています。
よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な教育内容をどのように学び、どのような資質能力を身につけられるようにするかを明確にしながら、社会との連携・協働によりその実現を図っていく。 ①社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。 ②これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自分の人生を切り開いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んで行くこと。 ③教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じ込めずに、その目指すところを社会と共有しながら実現させること |
人口減少とともに高齢社会、少子社会が進む中で、今の子供たちが社会や世界に向き合い関わり合い、自分の人生を切り開いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んで行くとともに社会の様々な場面で活用できる知識として身につけていくことが重要となります。また、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりしてその目指すところを社会と共有しながら実現させるとは、先生と地域住民がチームを組んでのチームティーチングと私はとらえています。
益城中央小学校では、「傾聴ボランティア」と称して、いろんな教科で地域の人に子供たちの発表を聞いてもらっています。それも、5人程度のグループに地域の人が1人張り付いて子供の発表を聞くのです。地域の人には「よく聴くこと」「よくほめること」「何か一つ質問すること」そして「教えるのは担任ですから教えるのはやめてください」の4つを約束しています。
例えば、6年生産算数の「三角形の縮図拡大図を書こう」の学習では、先生から指導していただいた拡大図の書き方を使って教科書の三角形の2倍の拡大図をノートに書いたものをボランティアに示しながら「教科書の三角形の底辺を図ったら5cmだったので、2倍して10cmの底辺を引きました。斜辺はそれぞれ3cm、4cmだったので2倍して、底辺の両端から6cm、8cmをコンパスでかき、交わった点を底辺と結びました。」と説明します。ボランティアは、「あなたの三角形の書き方はよく分かりました。でも、これが本当に教科書の三角形と同じ形と言えるのですか。」と質問します。子供は、「角度が同じなら同じ形と言えます。角度を測ってからまた説明にきます。」と言って自席で角度を測り、「角度は全く同じでした。」と説明にきます。作図の仕方をボランティアにわかりやすく説明することで、算数的思考力が耕されます。ボランティアの質問で合同な三角形について理解が深まります。まさに、アクティブラーニングによる学習内容の深化と拡充だと思います。
学校によっては、学校応援団年間計画が作成されています。小川小学校では、これを「地域学校協働活動年間計画」と称したものに作り替えてあります。しかも、それには、これまでのボランティアの方の氏名も明記してあります。学校全体で地域学校協働活動及びそれを支える地域ボランティアを共有してあります。これが、地域学校協働活動を組織的・主体的・継続的に推進する土台です。
先生方は多忙です。地域の方とじっくり授業づくりの打ち合わせをする時間の確保がむずかしいと思います。そこで、学習支援打ち合わせ簿を作る学校が多くなりました。この打ち合わせ簿にも変化が出てきました。それは、地域の人が支援から連携・協働へと進展したことを受けて、打ち合わせ簿に「本時の学習目標」を明記して、指導目標を担任とボランティアが共有すると共に指導に当たっての留意点を記すようになったことです。子供を見守り、子供ができることは子供に自力解決させ、できたところは大いに褒め、子供が主体的に学習に取り組むことをボランティアにも求めていることです。さらに、どの学年が地域学校協働活動に取り組んでいるかを学校全体で共通理解しておくために決裁欄まで設けていることです。参考にしてください。
先生方は、「サービスラーニング」という学習方法をご存じのことと思います。
サービスラーニングについて文科省は次のように定義付けています。
教育活動の一環として、一定の期間、地域のニーズ等を踏まえた社会奉仕活動を体験することによって、それまで知識として学んできたことを実際のサービス体験に活かし、また実際のサービス体験から自分の学問的取組や進路について新たな視野を得る教育プログラム。 |
また筑波大学のホームページでは次のように定義づけています。
サービス・ラーニングは、教室で学ばれた学問的な知識・技能を、地域社会の諸課題を解決するために組織された社会的活動に生かすことを通して、市民的責任や社会的役割を感じ取ってもらうことを目的とした教育方法、と定義されます。 |
サービスラーニングの実践例を紹介します。
まず、小学校4年社会科「生活に結びつくゴミの分別たんけん隊」の実践例です。
子供のつぶやき、「近頃、ゴミ出しのルールを守らない人が多くなった」とのお母さんの話から、ゴミ出しについての課題を収集します。その課題の中から、ゴミ減量について学習を深めます。この間、市の衛生課等からゴミ出しのルールや減量に関する取り組みを聞き取り、自分たちで課題解決方策を考えます。その方策を地域に提案し、子ども自らが実際にゴミ処理に関する社会的な活動に参加し,そこで考えたことを振り返るのです。社会に開かれた教育課程のところで述べましたように、社会で活きて働く力を身につける学習です。子供たちが社会参加する学習です。
次は、中学校2年数学科「コミュニティバスの運行計画の提案」です。
民間のバス会社が経営上の理由で撤退した後、コミュニティーバスがお年寄りにとっては、欠かせない交通機関であることを知り、バスの運行には、最低1日何名以上の乗客が必要なのか、運行上の規制はあるのかなどについて情報収集した後、より便利な運行計画を立てることが、お年寄りにとっても、バス会社にとっても必要であることを知り、その改善を探ろうという学習です。
老人ホーム、病院、銀行、郵便局、市役所の支所に、アンケート用紙を置き、コミュニティーバスの利用状況及び利用希望の時間帯と希望経路について把握します。現在の運行ダイアをもとに、乗客数と各乗客の持ち時間を計算し、状況を知ります。利用希望者の要望を基に運行計画を改善し、新たなコミュニティーバスの運行計画を立案し、運行ダイアを作成し、コミュニティーバス会社に、アンケート結果と運行計画のダイアを持参し、運行時間と運行経路の変更を提案するのです。
生徒が作成した運行計画が、地域に受け入れられ、お年寄りにとって、よりよく改善されているか検証します。学習した内容について、発表することで、地域社会の一員としての役割を果たしたことについての自信を深めたという学習です。まさに、生徒の新たな社会参加です。
サービスラーニングの大まかな流れは、①課題把握、②課題分析、③解決方法検討及び作成、④発表・提案です。皆さんの学校でも学校でも取り組んでみませんか。
終わりに、ボランティアの保険について紹介します。
益城町では、公益社団法人全国公民館連合会の公民館保険に加入しています。どこの市町村も加入していると思います。全町民が対象です。これは、公民館活動によって起きる事故等での傷害の補償制度です。公民館行事参加者のけがを補償、公民館利用者のけがを補償、公民館行事参加者の往復途上のけがを補償、公民館行事の事前練習や事前準備、後片付けでのけがを補償、食中毒や熱中症を補償していいます。
益城町では、地域学校協働活動はすべて公民館活動と捉えています。そこで、校長から公民館長に対して、何時、何処で、誰々が、どのような目的で、どのような学習支援をするか等を明記した派遣依頼文を提出します。公民館長がその要請を承諾すると、公民館活動とみなされます。
事故等への補償がありますので、学校では安心して地域学校協働活動を行うことができます。ご検討ください。
宇城管内では、法に基づく運営協議会が7校、ほとんどの学校が熊本版コミュニティ・スクールを宣言してあります。冒頭お話ししましたように、地域学校協働活動と学校運営協議会とが車の両輪となって、児童・生徒の確かな学力と豊かな心、そして将来我がふるさとを背負って立つ人材育成に努められることを祈念して話を終わります。ご静聴ありがとうございました。
資料
御船小学校学習支援の流れ(チームでコーディネート) 1 学級担任が、3ヶ月分の支援要請中期計画を作成し、コーディネーターチームへ提出 中期計画:予定月日時 教科 題材 支援内容 支援者数等をメモ書き程度 コーディネーターチーム:教頭 教諭1~2名(連絡調整担当・記録担当) 事務職員 2 教頭は、担任から出た「支援要請」をもとに「学習支援カード」を作成。 3 教頭が「地域コーディネーター(統括コーディネーター的役割)」へ支援者の紹介を依頼。 FAXで(少なくとも2週間前) 4 地域コーディネーターは、「学習支援カード」をもとに「ボランティアグループ代表者(地域コ ーディネーター的役割 複数)」へ支援者の紹介を依頼。 5 ボランティアグループ代表者は、「学習支援カード」をもとに手持ちの「人材バンク」から適任 者をさがし、承諾のあった適任者(支援ボランティア)を地域コーディネーターへ報告。 6 地域コーディネーターは、承諾のあった適任者を教頭へ報告。 教頭が、支援ボランティア名を学校コーディネーターへ通知。 7 学校コーディネーターは、支援ボランティアを学級担任・教科担任へ知らせる。 8 学級担任・教科担任は支援者と授業づくりについて話し合う。 大まかな授業の流れ 支援して欲しいこと 支援の方法 講話の場合はその時間(例えば10分程度)など その他(児童生徒の様子など) 9 授業の展開 授業後、担任と児童生徒はお礼の言葉を述べる。または手紙を書く。(具体的な例を交えて) 手紙を書く場合は、国語の作文指導を兼ねる。 10 お礼 |
七滝中央小学校学習支援の流れ(チームでコーディネート) 1 教頭または研究主任が、1学期分の学習支援要請計画を担任から聞き取る。 2 教頭または研究主任は、1学期分の「支援計画」及び「学習支援要請カード」を作成。 予定月日時 教科 題材 支援内容 支援者数等をメモ書き程度 3 学期に1度の学校応援団運営会議(地区公民館長会議を兼ねる)で、「学習支援要請カード」をもとに担当地区を調整。 4 公民館長は、受け持った「学習支援要請カード」をもとに適任者を探し、承諾のあった適任者(支 援ボランティア)を教頭へ報告。 5 教頭は、支援ボランティア名を学級担任へ通知。 6 学級担任は支援者と授業づくりについて話し合う。 大まかな授業の流れ 支援して欲しいこと 支援の方法 講話の場合はその時間(例えば10分程度)など その他(児童生徒の様子など) 7 授業の展開 授業後、担任と児童生徒はお礼の言葉を述べる。または手紙を書く。(具体的な例を交えて) 手紙を書く場合は、国語の作文指導を兼ねる。 8 お礼 |
サービスラーニング実践例
「生活に結びつくゴミの分別たんけん隊」
学習段階 | 学習活動の概要 | 学習活動の展開 |
Ⅰ.問題把握 |
家のゴミの出し方を振り返り,横浜市のごみ減量政策に対する関心を高める。 | 第1時:4月1日から家でもゴミの分別をしているのかな。 |
Ⅱ.問題分析 | ゴミの出し方,ゴミの収集の仕方,清掃工場の仕組みなど,廃棄物処理に関する 社会の仕組みを理解する。 |
第2時:家のゴミの出し方を調べて話し合おう。 第3時:集めたゴミはどこへ行くの。 第4時:清掃工場を見学してみよう。 第5時:見学したことを話し合い,実際のゴミの量を調べよう。 |
Ⅲ.意思決定 | 「ゴミの分別」に焦点を絞り,地域の人々から聞いた話などに基づいて,ゴミ処理の 方法について自分なりの考えを持つ。また,地域の人々が計 画的・協力的にゴミ処理に取り組んでいることに関心を高める。 |
第6時:地域のゴミステーションを調べ話し合う。 第7・8時:分別は厳しすぎるか必要か話し合う。 第9時:働いている人の考えや収集のようすを取材しよう。 第10 時:収集している人に話を聞こう。 |
Ⅳ.提案・参加 | 「地域のために自分たちにできること」を考える中で,地域の人々が計画的・協力的 にゴミ処理に取り組んでいることに理解を深める。また,子ども自らが実際にゴミ処理 に関する社会的な活動を参加するとともに,そこで考えたことを振り返る。 |
第11 時:地域のために自分たちにできることを話し合おう。 第12 時:自分たちの計画を地域の人にも聞いてもらおう。 第13 時:地域のためにできることを計画しよう。 第14 時:実践し地域の人の感想を聞いて活動を工夫しよう。 |
「コミュニティバスの運行計画の提案」の学習(2年 教科:数学「1次関数」)
学習段階 | 学習活動の概要 | 学習活動の展開 |
Ⅰ.問題把握 |
民間のバス会社が経営上の理由で撤退した後、コミュニティーバスがお年寄りにとっては、欠かせない交通機関である実態を知る。 バスの運行には、最低1日何名以上の乗客が必要なのか。運行上の規制はあるのかなど について理解する。 より便利な運行計画を立てることが、お年寄りにとっても、バスの運行団体にとっても必要 であることを知り、その改善に興味を持つ。 |
第1時:病院でのお年寄りへのインタビューのVTRを見て、コミュニティーバスの必要性を感じとる。 コミュニティーバスの運行のために必要な1日の最低乗客数を運営団体の方から聞く。 第2時:運行計画提案までの計画を立てる。 |
Ⅱ.問題分析 | 老人ホーム、病院、銀行、郵便局、市役所の支所に、アンケート用紙を置かせていただき、 コミュニティーバスの利用状況及び利用希望の時間帯と希望経路について把握する。 |
第3時:各施設に出向き、アンケートの目的を話し、協力を依頼する。 お年寄りから必要性について、インタビューを通して直接聞く。 第4時:アンケートを回収し、停車位置ごとの乗車希望時間と乗客数をまとめ、表を作成する。 |
Ⅲ.意思決定 | 現在運行している運行計画用のダイアグラムを作成し、乗客数と各乗客の持ち時間を 計算し、状況を知る。 利用希望者の要望を基に運行計画を改善し、新たなコミュニティーバスの運行計画を立案し、ダイアグラムを作成する。 |
第5 時:表のデータを使って、バスの時速とバス停間の距離を基に、現在運行している計画に 従って、ダイアグラムを作成する。 第6時:利用希望者の希望を基に運行計画を改善し、新たなコミュニティーバスの運行計画を立 案し、ダイアグラムを作成する。 |
Ⅳ.提案・参加 | コミュニティーバスの運行団体に、アンケート結果と運行計画のダイアグラムを持参し、 運行時間と運行経路の変更を提案する。 新たな運行計画が、地域に受け入れられ、お年寄りにとって、よりよく改善されているか検証する。 学習した内容について、発表することで、地域社会の一員としての役割を果たした ことについての自信を深める。 |
第7時:新たなコミュニティーバスの運行計画を提案し、そのダイアグラムを運行団体に提出する。 第8時:新たな運行計画の施行後、各施設に出向き、よりよくなったかを調査する。 第9時:この学習で学んだことについての発表会の準備をする。 第10時:発表会を実施する。 |